よか日記 Op.61

きのうの「なんじゃこりゃあ」の最後で、「聖夜の晩餐」酔っ払い和声のところの臨時記号の振り方について、ちょっと触れましたが…。

いや、読みにくいからって、勝手に異名同音に変えるなって話題です。

ついでに自分にトラックバックのテスト（笑）いや、blogって私今ひとつまだよくわかっていないのネ。これでいいのかな。
 

むかーし、全音の実用版楽譜しか知らなかったころ（＾＾；）、エチュードOp.25-10にどうも不思議でならない箇所がありました。

これ


ずっとF♯₇の上昇音型でクレシェンドしてきたのに、ここでいきなり訳解らん転調して、突然黙り込んで、ユニゾンの３つの音を意味不明にボソっとつぶやいたあと、何事もなかったように知らん顔でロ長調の旋律をうたいだすんですよ。
なんか洗練されてないというか、曲の表情の移り変わりが急速でついていけない感じでした。まるでアルカンみたい。いや、その頃はアルカンなんて知らんかったけど。

のちに、原典版楽譜をみて、やっと納得がいきました。というかびっくりしました。


これならば「ここは酔っ払ってるけど、あくまでもF♯₇なんだぞ」という、ショパンの意思が感じられるわけですよ。F♯₇→→→Bという和声進行なんだという、ね。
まぁ、異名同音なんで、聴いた感じは変わらないっていえばそうなんだけど、でもねぇ（溜息）。

荒れ狂ったロ短調の属7であるF♯₇が、やっと31小節目（ben legatoのところ）でロ長調の主和音であるBに優しく解決するんだ、という意識があれば、その前のユニゾンもおろそかには弾けないんではないかなぁ。

前の楽譜だと、あ、E、F♯、C♯ね、ポーン、ポン、ポンて感じで、ちゃらんぽらんに弾いてしまいそうです。

全音から出ているショパンピアノ協奏曲２番（ピアノ２台用楽譜）の小林秀雄氏の力がこもった解説に

両手のオクターブによる一本のメロディーではあってもソリストは，自分がいま奏している曲の調や，和声的背景の識別，認識なしに演奏すべきではない，と心得る。そのようなピアニストは，不特定多数の聴衆の前で，音楽を演ずる資格は皆無である。

なんて、オソロシイことがかいてありますが（汗）、基本的にはまったくの同感です。

特にショパンなんか、文学的とか情景描写とかとは全く縁のない作曲家なので、感情を込める対象は、音の意味そのものしかないわけです。その音がないがしろにされるのは、いやだなぁ。

（じいさんの掲示板へのたんざんさんの書き込み）
昨日「古賀書店」で買った前奏曲集の注釈に面白いことが書いてありました。ちょっとご紹介しますと・・・

・・・ショパンほど「検閲者」の犠牲になった作曲家はいない。いつものようにたくさんの”改善”で原稿をすっかりだめにしてしまう競争が始まるのだった、あたかもショパンは「自分の音楽を正しく書くやり方を知らなかった、といことを証明したいかのように」・・・

これって、その当時から、ショパンってなんかそんな（「怪しい」）目で見られていた、という一面を示してるのかもしれないな、と思います。

うーむ。