>私はこのときは真剣に弾きましたよ。曲は武満徹の「遮られない休息」
>というやつです。もろに現代曲ですけど、譜面を見るほどには実際は
>難しくはありません。ただ、ものすごく神経を使う曲でした。
この「遮られない休息」についての個人的な思い出……
私が最初に武満徹の作品と出会ったのは、旧版の音楽之友社の世界大音楽全集
にあった「日本ピアノ曲集第2巻」の中に収録されていた「遮られない休息」
という初期のピアノ曲でした。
この楽譜集には様々な日本の作曲家のピアノ曲が集められていましたが、武満
のページだけが楽譜を一瞥しただけで、これはただものではないといった
たたずまいでひときわ輝いており、ひとつも音にしないのに見ただけでなんだか
すごい作品かも、と当時高校生だった私の目につきささってきたのです。
早速私はピアノで音にしてみました。そのときの衝撃は忘れられません。
メシアンのようでいて、あるいはベルクのようでいて、結局どれでもない。
非常にぽつぽつと音を置いた朴訥とした曲なのに、なんと精緻でクリアな
響きなのだろう。そしてそこに流れている「悲しみのトーン」。まるで
バッハの宗教曲を聴いているような気さえしてきたのです。
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